古ヘブライ語-𐤉𐤄𐤅𐤄の変遷

メシャ碑文(モアブ碑)

紀元前9世紀にモアブのメシャ王によって作成された碑文。古ヘブライ文字と類似しているフェニキア文字でエホバ(𐤉𐤄𐤅𐤄)の名前が書かれています。

[1]I am Mesha, son of Chemosh-gad, king of Moab, the Dibonite. My father reigned over Moab thirty years, and I have reigned after my father.

私はメシャ、ケモシュ・ガドの息子、モアブの王ディボニトである。私の父はモアブを三十年間治め、私も父の後に治め始めた…

[18] …women and maidens, for I devoted them to Ashtar-Chemosh; and I took from it the vessels of Jehovah and offered them before Chemosh.

女性と乙女たち、私は彼女たちをアシュタル・ケモシュに捧げた;そして私はそこからエホバの器を奪い、それらをケモシュの前に捧げた。


ケモシュ:カナンに住むモアブ人の主神。

(列王第二 3:4, 5) …モアブの王メシャは羊を飼育していて,貢ぎ物として,子羊10万匹と毛を刈っていない雄羊10万匹をイスラエルの王に納めていた。  しかし,アハブが死んで間もなく,モアブの王はイスラエルの王に反抗した。

ルーブル美術館所蔵/Mesha Stele

Kuntillet Ajrud(クンティレット・アジュルド)のピトス碑文

紀元前9世紀末から紀元前8世紀初頭にかけて、大きな貯蔵壺(ピトス)に書かれた碑文に古代ヘブライ語で書かれたエホバ(𐤉𐤄𐤅𐤄)の文字がみられます。女神アシェラ(聖木)と結びつけています。

長生きし、繁栄し…エホバにイエメンを与え、彼のアシェラに…

エホバ…助ける…

YHWH Ṣebaot(万軍のエホバ)碑文

ヘブライ聖書の中で250回以上「万軍の(ツァバーオート)エホバ」(𐤉𐤄𐤅𐤄)が用いられています。紀元前800年から750年頃の、ヘブロンの埋葬用の洞窟から発見された碑文にも使われています。聖書中だけでなく、盗掘者に対する呪いの言葉として言及するくらい一般的に使われていたことが分かります。

(イザヤ 1:24) …そのため,真の主,大軍を率いるエホバ, イスラエルの強力な方はこう宣言する。 「聞きなさい! 私は反対者たちを除き去り, 敵たちに復讐する。

(ローマ 9:29) …イザヤはこうも予告していました。「大軍を率いるエホバが私たちに子孫を残してくださらなかったなら,私たちはまさにソドムのようになり,ゴモラと同じようになっていただろう」。

ハガブの子ハガフは万軍のエホバから災いを受けよ

※右に抜き出している部分がYHWH(エホバ)


聖書の土地博物館所蔵(エルサレム)

Khirbet el-Qom(キルベト・エル・コム)

ヘブロンの西14km、ユダ王国の領土で紀元前8世紀後半頃の碑文(ウリヤフ碑文)が見つかりました。イスラエルとユダが分裂した王国の時代のものでエホバ神への崇拝から背教し、カナンの土地の女神アシェラを崇拝しました。

「その日,地の人は自分の造り主を仰ぎ見,その目はイスラエルの聖なる方ご自身を見つめる。自分の手で作った祭壇を見ることはなく,自分の指で作った聖木や香台も見つめない。」(イザヤ 17:7,8)※元のヘブライ語アシェーラーは,(1)カナン人の豊作の女神アシェラを表す聖木か,(2)女神アシェラそのものを指す。聖木は真っすぐに立てられ,少なくとも一部が木製だったと思われる。彫刻が施されていない木の柱か,もしかすると樹木だったのかもしれない。(申 16:21。裁 6:26。王一 15:13)

古ヘブライ語でエホバ(𐤉𐤄𐤅𐤄)が刻まれています。

ウリヤフ碑文イラスト

尊敬すべきウリヤフがこれを書いた

エホバによって祝福された祝福されたウリヤフである
そして彼のアシェラによって抑圧者から救われました

…彼のアシェラによって
…そして彼のアシェラ


Khirbet el-Qom

Tel Arad ostraca(テル・アラド オストラカ)

死海の西8kmのネゲブの地域にテル・アラドの遺跡があります。バビロニアによる征服前とみられる紀元前6世紀ころのオストラカが発見されました。

𐤉𐤄𐤅𐤄
エホバ

神の名前(エホバ,𐤉𐤄𐤅𐤄)が挨拶や祝福する時など日常生活の中で、一般的に普通に使われていました。

Ketef Hinnom scrolls(ケテフ・ヒンノムの巻き物)

西暦前607年より前のもので、エルサレムのヒンノムの谷の埋葬用洞窟で見つかったものです。銀製の小さな巻き物2本です。左側は、出エジプト記20:6や申命記5:10;7:9などの教えが含まれており、1行目、12行目、14行目、17行目にエホバ(𐤉𐤄𐤅𐤄)が刻まれています。右側は、民数記6:24-26が引用されていて、2行目と6行目にエホバ(𐤉𐤄𐤅𐤄)が刻まれています。

エホバがあなたを祝福して守ってくださいますように

エホバが笑顔をあなたに向け,恵みを与えてくださいますように

エホバがあなたに向かって顔を上げ,平和を与えてくださいますように


Ketef Hinnom scrolls

Khirbet Beit Lei(キル・ベト・レイ)

紀元前6世紀末とみられる、テル・ラキシュの南東約5.5キロメートルの墓穴に書かれた即興的な碑文にもエホバ(𐤉𐤄𐤅𐤄)の名前が刻まれています。

エホバは全地の神である

ユダの山々はエルサレムの神のものである


Khirbet Beit Lei

ラキュシュ書簡

紀元前590年頃にラキュシュがバビロンに陥落する直前に書かれたもので、駐屯地のホシャヤフからラキュシュの指揮官ヤウシュに宛てた複数の書簡です。21点の陶器の破片の中で、「エホバが~ように」(May Jehovah~, 𐤉𐤄𐤅𐤄)などの形で10回以上言及しています。

我が主ヤウシュへ。主エホバの平和の知らせが聞かれますように ……

エホバが…あなたが知らないことことを知らせてくださいますように。


Lachish letters

ゲリジム山のサマリア神殿の碑文

ゲリジム山のサマリア神殿は紀元前450年頃に建てられました。そこで古ヘブライ語でエホバ(𐤉𐤄𐤅𐤄)と書かれた碑文が発見されました。

「我が主エルヤシブへ。エホバがあなたの幸せを気にかけてくださいますように。……彼はエホバの家にとどまっています」

グッドサマリタン・イン博物館所蔵

Nash Papyrus-MS Or.233(ナッシュ・パピルス)

ナッシュ・パピルスは紀元前2世紀の断片で、十戒(おそらく出エジプト記20章と申命記5章を反映している)とシェマー(申命記6:4-5)が記されていました。「エホバ」(יהיה)は、左列の最初の行の1文字が欠けた1箇所を含む6箇所に記録されています。右側に飛び出た部分に1箇所書かれています。

聖句カードのように、重要な聖句を抜き出して、活用されていたことが分かります。このような用途で「エホバ」(יהיה)の名前が使われていたことが分かります。

אנכי יהוה אלהיך אשר הוצאתיך מארץ מצרים מבית עבדים
わたしはあなたの神エホバであり、あなたをエジプトの地・奴隷の家から連れ出した者である。

לא יהיה לך אלהים אחרים על פני
あなたには、わたしエホバの前に他の神々があってはならない。

לא תעשה לך פסל וכל תמונה אשר בשמים ממעל ואשר בארץ מתחת ואשר במים מתחת לארץ
自分のために、天の上・地の下・水の下にあるどんな像も作ってはならない。

לא תשתחוה להם ולא תעבדם
それらにひれ伏してはならず、仕えてはならない。

לא תשא את שם יהוה אלהיך לשוא
あなたの神のエホバの名を、偽って口にしてはならない。

שמור את יום השבת לקדשו
安息日を守り、それを聖なるものとせよ。

כבד את אביך ואת אמך あなたの父と母を敬え。

לא תרצח 殺してはならない。

לא תנאף 姦淫してはならない。

לא תגנב 盗んではならない。

לא תענה ברעך עד שקר
隣人に対して偽りの証人となってはならない。

לא תחמד אשת רעך 隣人の妻を欲してはならない。

לא תחמד בית רעך ושדהו ועבדו ואמתו ושורו וחמרו וכל אשר לרעך
隣人の家・畑・男女の奴隷・牛・ろば・隣人の所有するすべてのものを欲してはならない。

שמע ישראל יהוה אלהינו יהוה אחד
聞け、イスラエルよ。わたしたちの神エホバは、エホバは唯一である。

ואהבת את יהוה אלהיך בכל לבבך ובכל נפשך ובכל מאדך
あなたはあなたの神エホバを、あなたのすべての心・すべての魂・すべての力をもって愛せよ。

Nash Papyrus-MS Or.233

Dead sea Scroll(死海文書)

Qumran, Cave11(クムラン、洞窟11)

死海北西のクムランにある洞窟群で死海写本が発見されました。詩編119編の大半が入っている巻き物で、ヘブライ語で書かれていますが、エホバ(𐤉𐤄𐤅𐤄)の箇所は古ヘブライ語で書かれています。

詩編119編はアクロスティック(折句)の詩になっています。数行ごとの右端が同じヘブライ語のアルファベットで始まっています。下の画像部分では、「ה」(ヘー)37節から始まり、「ו」(ワーウ)41-48節、「ז」(ザイン)から「ח」(ヘート)の2節は消失し、「ח」(ヘート)59-64節、「ט」(テート)65-72節、「י」(ヨード)から「כ」(カフ)の1節は消失し、「כ」(カフ)82-88節、「ל」(ラーメド)89-96節と続いていきます。このように詩を暗記して歌いやすいように工夫されています。

(詩編 119:41, ו (ワーウ)) …エホバ,あなたの約束通り,あなたの揺るぎない愛を私が受け, 救われますように。

(詩編 119:64, ח [ヘート]) …エホバ,あなたの揺るぎない愛は地上に満ちている。 あなたの規定を教えてください。

(詩編 119:65, ט [テート]) …エホバ,あなたはご自分の言葉通り, 私によくしてくださった。

Dead Sea Scrolls Digital Library

詩編138編1-3節

真ん中列の上から2行目から詩編138編が始まりますが、マソラ本文にはない別バージョンのようで、明らかにエホバ(𐤉𐤄𐤅𐤄)の回数が多く見られます。

詩編138:1-3では「私​は​心​から​あなた​を​賛美​する。他​の​神々​の​前​で, あなた​を​賛美​し​て​歌う。  あなた​の​聖​なる​神殿​に​向かっ​て​ひれ​伏し, あなた​の​名​を​賛美​する。 あなた​は​揺るぎない​愛​を​示し,信頼​できる​方​だ​から。 あなた​は​ご自分​の​言葉​と​名​を,何​より​も何​より​も​素晴らしい​もの​に​し​た。 私​が​呼ん​だ​日,あなた​は​答え​て​くださっ​た。 私​を​勇敢​で​強い​人​に​し​て​くださっ​た。」

左写真の拡大図2行目の中央付近の、𐤉𐤄𐤅𐤄・・・・(エホバ)一文字ごとに「・・・・」が上と下に付されています。

通常、間違いが見つかった場合、その箇所は、インク消しなどを使い、物理的に消されていましたが、神聖な名前(𐤉𐤄𐤅𐤄)を消すことは不適切だと考え、「・・・・」を用いて修正したようです。

  1. 𐤉𐤄𐤅𐤄 אלוהינו אמרנו אשתוחוה
  2. אל חסדיהו ואודות את שמחה על חסדיהו ועל גדלתו
  3. כי רחמתנו על כל שמחה יולדתנו ביום קראתי ותעננו
  4. תראה כי בנפשו ישמח 𐤉𐤄𐤅𐤄 בגללהו יאיר פני שמש
  5. יאירו פניו וישורו פנינו 𐤉𐤄𐤅𐤄 כי גדול כבוד 𐤉𐤄𐤅𐤄
  6. כי 𐤉𐤄𐤅𐤄 וישיבנו ויבנו ומבחוץ ירוע אשרינו
  7. בתוך ירוח תנוע על אף 𐤉𐤄𐤅𐤄 תשלח ידכה ותושיענו
  8. ונרננה 𐤉𐤄𐤅𐤄 וגמור בעמו 𐤉𐤄𐤅𐤄 חסדיהו לדוריו
  9. לעשות רצונו ישראל תרנן

1.私たちの神エホバ、私はあなたを賛美する。2.あなたの慈しみと偉大さについての喜びを感謝しながら。3.あなたは私が生まれた時から憐れんでくださった。私が呼んだ日、あなたは答えてくださった。4.エホバよ、私は喜び歌う。エホバはその民を、永遠に慈しまれるからだ。5.エホバよ、あなたのみ顔は照り輝き、私はあなたをまっすぐに見つめる。エホバの栄光は偉大だから。6.真のエホバは、私を帰らせ町を建てさせる。喜びの叫びが外まで響くだろう。7.エホバは突風の中で歩く時も、敵の怒りの中で、手を差し出し救ってくださる。8.エホバよ、私は喜び歌う。エホバはご自分の民のために全てのことを成し遂げてくださる。

Dead Sea Scrolls Digital Library

Nahal Hever(ナハル・ヘヴェル)の洞窟

マサダの北約10kmの死海西岸にある洞窟の中で、ギリシャ語で書かれたセプトゥアギンタ訳(70人訳)の十二預言書の巻き物(8Hev1 – 8Hev XII, Dead Sea Scrolls Digital Library)が見つかりました。紀元前50-紀元50年の間に作られたと考えられています。ギリシャ語本文中に、エホバ(𐤉𐤄𐤅𐤄)の名前が古ヘブライ語で記されています。巻き物によって、異なる書体の古ヘブライ語が用いられています。

ゼカリヤ書の写本(ゼカリヤ8:20-9:4)Dead Sea Scrolls Digital Library

ハバクク書の写本 Dead Sea Scrolls Digital Library

ミカ書の写本(左側はミカ4:3-5。右側がミカ5:2-5。)Dead Sea Scrolls Digital Library

興味深いことに、3世紀の神学者オリゲネスは、「詩編2編2節の注解」の中で「最も正確な部類の(ギリシャ語の)写本」は古い時代のヘブライ語で神の名前が記されている、と述べています。

Papyrus Oxyrhynchus 3522

ヨブ記42:11-12節をギリシャ語に訳したセプトゥアギンタ訳です。ギリシャ語本文中に、エホバ(𐤉𐤄𐤅𐤄)の名前が2回、古ヘブライ語で記されています。

κ]αι εθαυμασαν οσα επ[ηγαγε]
ν ο 𐤉𐤄𐤅𐤄 επαυτον εδ[ωκεδε]
αυτω εκαστος αμναδα μι
αν]και τετραχμον χρυσουν
α]σημον ο δε 𐤉𐤄𐤅𐤄 ευλογή
σ]εν τα εσχατα ϊώβ η τα [εμπ]
ροσθεν ην δε τα κτ[ηνηαυτου προβα]
τα μυρία[ τε

ヨブ​の​兄弟​姉妹​や​かつて​の​友人​が​皆​やっ​て​来​て,ヨブ​の​家​で​一緒​に​食事​を​し​た。皆​は,エホバ​が​ヨブ​の​身​に​生じる​まま​に​し​た​さまざま​な​災難​の​こと​で,同情​し​て​慰め​た。一人一人​が​ヨブ​に,お金​と​金​の​輪​1​つ​を​贈っ​た。

エホバ​が​ヨブ​を​祝福​し​た​の​で,ヨブ​の​残り​の​人生​は​以前​より​も​豊か​に​なっ​た。ヨブ​は,羊​1万4000​匹,

タイトルとURLをコピーしました