オリゲネス「詩篇注解線集」詩編2:2

オリゲネス『詩編注解選集』詩編2編2節(Patrologiae Cursus Completus – Series Graeca – Volume 12 – Origen 2)

神の名の発音と読み替えについて

旧約聖書中の複数の本文を比較対照したヘクサプラ(六欄組聖書)を編纂したオリゲネス(Origenes Adamantius, 185-254年頃)は、「詩編2編2節の注解」の中で、ユダヤ人が神の名を口にせず「アドナイ」と読み替え、ギリシャ人が「キュリオス」と呼ぶ背景を説明しています。

  • ギリシャ語原文(右列)Ἔστι δέ τι τετραγράμματον ἀνεκφώνητον παρ’ αὐτοῖς, ὅπερ καὶ ἐπὶ τοῦ πετάλου τοῦ χρυσοῦ τοῦ ἀρχιερέως ἀναγέγραπται, καὶ λέγεται μὲν τῇ « Ἀδωναὶ » προσηγορίᾳ, οὐχὶ τούτου γεγραμμένου ἐν τῷ τετραγράμματῳ· παρὰ δὲ Ἕλλησι τῇ « Κύριος » ἐκφωνεῖται.
  • ラテン語訳(左列)Est etiam apud illos ineffabile quoddam nomen tetragrammaton, id est, quatuor literis constans, in aurea summi sacerdotis lamina inscriptum, et voce « Adonai » enuntiatur, licet hoc non scriptum sit in tetragrammato, apud Graecos vero exprimitur voce « Dominus ».
  • 日本語訳また、彼ら(ユダヤ人)の間には、口に出して読まれないテトラグラマトンと呼ばれるある名がある。それは大祭司の金の額板の上にも記されている。それは「アドナイ」という呼称で呼ばれるが、その(アドナイという単語)がテトラグラマトンの中に書かれているわけではない。またギリシャ人の間では、「主(キュリオス)」という言葉で発音される。

ミーニュ編『Patrologia Graeca』第12巻(注解書)1104段より抜粋

最も正確な写本における「古ヘブライ文字」表記について

オリゲネスが確認した「最も正確なギリシャ語写本」 (セプトゥアギンタ訳やアクィラ訳など)の中には、神の名前が古ヘブライ文字(Paleo-Hebrew)で記されていたと証言しています。

  • ギリシャ語原文(右列)Καὶ ἐν τοῖς ἀκριβεστάτοις δὲ τῶν ἀντιγράφων Ἑβραίοις χαρακτῆρσι κεῖται τὸ ὄνομα, Ἑβραϊκοῖς δὲ οὐ τοῖς νῦν, ἀλλὰ τοῖς ἀρχαιοτάτοις.
  • ラテン語訳(左列)Ac in accuratioribus exemplaribus hoc nomen scriptum est Hebraicis literis, hebraicis quidem antiquis, non autem hodiernis.
  • 日本語訳そして、最も正確な部類の写本においては、その名(神名)はヘブライ文字で記されている。ただしヘブライ文字といっても現在の文字ではなく、最も古風な(古い時代の)文字によってである。

20世紀になって「死海文書」や「ナハル・ヘベルのギリシャ語小預言者巻き物」に、オリゲネスの証言を裏付ける証拠が発見されました。

エズラによる文字の変化について

オリゲネスの時代に一般的になっていたアラム式ヘブライ語書体(クターヴ・アシュリ,アッシリアの文字)ではなく、モーセの時代から使われていた古ヘブライ文字が使われていたと伝えています。

  • ギリシア語原文(右列)Φασὶ γὰρ τὸν Ἔσδραν ἐν τῇ αἰχμαλωσίᾳ ἑτέρους αὐτοῖς χαρακτῆρας παρὰ τοὺς προτέρους παραδεδωκέναι.
  • ラテン語訳(左列)Narrant enim Esdram in captivitate alios ipsis characteres loco priorum tradidisse.
  • 日本語訳なぜなら、エズラが(バビロン)捕囚の際に、以前の文字(古ヘブライ文字)の代わりに別の文字(現在の角型文字)を彼らに伝えたと言われているからである。

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